観光地飲食店におけるEPARKシステム活用術
狭域商圏内での現在地検索機能を活かした回遊促進と誘導効果
新型コロナウィルスが長期化する中、「外食」、「観光」産業全体としては依然として厳しい状況が続いている一方で、業界内を企業毎に精査してみると、K字回復により二極化する様相が見て取れる。
株式会社JSフードシステム(代表取締役社長 田川順也)は日本でも有数の観光地である箱根小田原エリアに特化し外食事業を営む企業である。
常に斬新且つ独創的なアイデアを具現化したビジネスモデルで成長を続ける同社について、田川明宏常務取締役にご協力頂き、事業全般や観光地飲食店ならではのEPARK順番待ちシステム活用術など、同じ観光地立地の飲食店にとっても有益な話を伺うことができた。
地域特化型サプライチェーンマネジメントで激しい環境の変化にも適応
産業・地域としてコロナの余波を大きく受ける中、2020年度は一時的に落ち込んだものの、直近2021年9月期決算では、コロナ前と比較しても純利益率を高めながらの増収増益となるなど着実に成長を続けている。他の観光地における飲食店と何が違うのだろうか。
同社の最大の特徴は、展開地域を「自分たちが直接目の届く範囲」に限定し「仕入」「製造」「加工」「物流」「企画」「販売」を一気通貫して自社で手掛けている点にある。
サプライチェーンマネジメントに社長以下経営層が直接深く関わることで、店で提供する料理の素材の安心・安全に責任を持ちながらも、消費者のトレンドや嗜好の変化を敏感に肌で感じ取り、現場にスピーディに反映する。それが、特に変化の激しい昨今の顧客ニーズにも瞬時に応えることができ、支持され続けている理由でもある。
また、小田原魚港で直接仕入れる海産物や自社の自然薯農家が育てた自然薯を地場でしか味わえない高付加価値の独自メニューとして適正価格で提供することで、利益率を確保すると同時に、人材採用への投資も行えるといった好循環のビジネスモデルを構築している。
現在10店舗を展開するが、「じねんじょ蕎麦 箱根 九十九」や「箱根 自然薯の森 山薬」を筆頭にどの店も斬新な店づくりと独自性の髙いメニュー開発で他店との差別化が図られており、行列のできる観光名所にもなっている。
2022年8月にオープンした「自然薯農家レストラン 山薬 宮城野本店」では、和食の五法(焼く・煮る・揚げる・生・蒸す)を用いて自然薯の料理の幅を更に広げたさまざまな自然薯料理を提供。全国でも類を見ないほど自然薯料理を専門的に提供する、まさに自然薯料理を極めた店となっている。
そういった独創的なアイデアやコンセプトは社長以下役員陣が常に膨らませストックしており、物件とイメージが合致した際には、すぐに意思決定が諮られるといったフットワークの軽さも同社の強みの1つである。
日時指定順番待ち予約の枠数最適化で売上を最大化
EPARK順番待ちシステムが導入されている同社系列店の中でも発券数上位店の1つが、斬新な店舗デザインで話題の「じねんじょ蕎麦 箱根 九十九」。
元々は店長が他の系列店(小田原早川漁村 漁師の浜焼あぶりや ららぽーと湘南平塚店)勤務時にEPARKを運用しており、効果を実感していたことから、会社に導入を上申したのがきっかけであった。
田川常務もそれまではEPARKをさほど意識していなかったが、月額費用も割安に感じたことから「じねんじょ蕎麦 箱根 九十九」でも導入するに至った。
今では店舗運営には欠かせないシステムとなっているが、特にEPARKが特許を保有する機能「WEBでの日時指定順番待ち(将来順番待ち)予約」が重宝しているという。
観光地の飲食店経営ではいかにしてピーク時間帯の回転率を高めつつ、ピーク帯以外を事前に予約で埋めていけるかが生命線となる。
同社では、店長と本部が密に連携を取りながら、シーズン、曜日、時間帯毎の最適な予約枠数を調整していくことで売上を最大化させているというのだ。
例えば、平日のランチ時間帯は店頭発券のみとした上で、ピーク帯以外の15時~17時では前週の時間帯毎の店頭発券数やWEB予約数、キャンセル数、空席率などを参考としながら、最適な時間帯毎の予約可能枠数を設定するなど。
更に当日の天気や人の流れに応じて瞬時に設定を切り替えるなど柔軟且つきめ細かな運用によって高回転率を実現している。
また、店舗の公式ホームページの目立つ位置には予約誘導バナーを設置することで、ユーザーには遷移先で現在の待ち時間状況を確認してもらいながら予約へのスムースな誘導も行うことができている。
同店での効果が可視化されたことで、他の系列店にもEPARK順番待ちシステムの導入が一気に進み、日時指定順番待ち予約機能に関しても積極的に活用していくこととなった。
まさに、他の観光地立地飲食店にとっても模範となるEPARK活用術である。
狭域商圏におけるEPARK会員基盤の活用と相乗効果
観光地のような狭域商圏においてEPARKを導入する施設側のメリットは他にもある。
例えば観光客が箱根を訪れた際、箱根・小田原周辺にある人気店の待ち状況を確認しながら限られた時間で効率的に周遊したいというニーズは髙いであろう。
EPARKは会員4,000万人以上、月間でも40万人以上会員数が増加する国内有数の大規模プラットフォームであり、EPARK加盟店となるだけでそれらの会員基盤に対して自店舗を露出できる環境が整う。
また、EPARK加盟店には流入会員という概念があり、AというEPARK加盟店を起点に会員登録を行なったユーザーが、更にBという別のEPARK加盟店でもマイショップ登録を行うとB加盟店では流入会員としてカウントされる。
「じねんじょ蕎麦箱根 九十九」のマイショップ登録会員の実に約7割は流入会員である。
同商圏内には同社が経営する「地魚回転すし小田原港」、「小田原早川漁村」などの他、EPARKに加盟店する他の行列店「田むら銀かつ亭」、「湯葉丼 直吉」、「えれんなごっそ」、「そばと板わさ美蔵」、「湘南パンケーキ小田原本店」などがあり、EPARK専用アプリの地図上には密集した状態でマッピングされている。
ユーザーはアプリの「現在地から探す」機能を使って、それらの人気店の位置関係、待ち状況やWEB予約可能な時間帯を同時に把握しながら効率的に周遊することができる。
EPARK加盟店にとっては、同商圏内に足を運んでいるユーザーの目に触れる機会が増えることで、WEB予約や利用の選択肢にもつながるといった相乗効果も期待できる。
また、考え方によっては、同商圏内に展開する他の系列店やEPARK加盟店が連携し地域全体で販促展開を行うことも可能である。
例えば、共通のスタンプラリーやクーポンのような買い周りを促進できるような販促企画を立て、それぞれの加盟店に登録されているマイショップ会員に向けて、同じくEPARKのDM配信機能を使って訴求するといった地域全体での販促施策などが考えられる。観光地ならではのEPARK活用法である。
今回のインタビューを通じて学んだことは、観光地における店舗経営においては、地域全体が潤うことによって、そこで事業を営む企業や店、人へと還元され経済の好循環を生んでいくのだという考え方であった。
取材協力
株式会社 JSフードシステム
神奈川県小田原市入生田165番地
https://js-fs.net/
じねんじょ蕎麦 箱根 九十九
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原917−11
https://www.hakone-soba.com/
小田原早川漁村
神奈川県 小田原市早川1-9-6
https://www.gyoson.com/
箱根 自然薯の森 山薬
神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下226-2
https://www.yamagusuri.com/
自然薯農家レストラン 山薬 宮城野本店
神奈川県足柄下郡箱根町宮城野829
https://www.yamagusuri.com/yamagusuri-miyagino/
地魚回転すし 小田原港
神奈川県小田原市早川1-11-2
https://www.odawarako.jp/