郡山市マイナンバーカードセンターによる
EPARK順番待ちシステム活用事例
マイナンバーカード普及率向上の鍵は
国と自治体との役割分担明確化とタイムリーなIT投資
国内外の人気飲食店向けに順番待ちシステムを提供する、株式会社EPG(旧:株式会社EPARKグルメ)は、福島県の郡山市役所(市長:品川萬里)と連携し、EPARK順番待ちシステムを活用した行政窓口のICT化による来庁者の利便性向上と感染症対策との両立、庁舎内における職員の安全確保と受付業務効率化への取り組みを開始致しました。
郡山市役所でのマイナンバーカード普及推進施策の一環としてEPARK順番待ちシステムの導入に携った、郡山市市民部市民課マイナンバーカード係太田紘介主事にお話しを伺いました。
庁舎内の感染症対策として呼び出し機能のついた順番待ちシステム導入は喫緊の課題
当初太田さんは消費者としても順番待ちシステムを殆ど利用したことがなく、機器に関しての情報はかなり薄かったという。そこで既に順番待ちシステムを導入している他の自治体へ視察をした先輩職員から話を聞いたり、実際に順番待ちシステムの導入に携わった他県の自治体担当者からも利用実態を聞くなどしながら各メーカーから出されているスペック以外の主に利用実態に関する情報収集と知見を深め機器選定に役立てていった。
EPARK順番待ちシステムの第一印象は、多くの飲食チェーンに導入され、国内に利用者数も相当数あることから、機能やサービスが洗練されていると感じたという。
導入の決め手は自社によるサポート・保守体制の充実度
公募入札のためコストや機能面での条件をクリアしていることは前提として、発券と呼び出し機能を備えた類似製品には、安価だがサポート体制に不安が感じられたり、保守領域を自社では全く対応していなかったりという企業が多い中、EPARKでは24時間365日体制のコールセンターや自社でのサポート保守体制を構築しており、アフターフォローが手厚いという点が自治体での長期安定稼働を優先していくにあたり重要な決め手となった。
部門管理機能を活用し利用者側負荷軽減と職員対応工数最適化。
窓口毎受付数をリアルタイムに見える化しリソース最適配置実現
2021年4月12日よりマイナンバーカードセンターの9つの窓口に対して、来庁者向けにはEPARK順番待ち発券機を1台と番号案内用表示機(モニター)を2台設置し、職員側にはEPARK端末4台を連携して運用している。
発券機ではEPARK順番待ちシステム独自の特徴でもある部門管理機能(特許取得)を活用し、4つのカテゴリーに分類した発券を行っている。それにより来庁者がマイナンバーカードの交付目的か、申請目的か、電子証明書の発行・更新目的か、その他の目的かが事前に振り分けられ、職員側も目的別に対応マニュアルを事前に整備するなどし、専門性を高めた対応を図ることができる。結果として、来庁者1人あたりの対応時間の最適化に繋がった。
また、当初は想定していなかった副産物の発見もあった。EPARK順番待ちシステムには日々の部門(来庁目的)毎の受付数がデータとして確認できるレポート機能が実装されているが、その機能を活用し分析することで窓口の最適な配置が実現できたという。当初は電子証明書対応用の窓口を2つ設けていたが、受付数データを見ると電子証明書の受付数がマイナンバーカード交付・申請受付数に比べかなり少ないことが判明。すぐに電子証明書の窓口数を減らしマイナンバーカード関連窓口に割り当てるという意思決定がデータを見ながら迅速に行うことができた。
尚、これらの独自機能は特許庁の厳格な審査を経て正式に特許を取得した国内でも有数のシステムとなるが、昨今特許侵害リスクの恐れのあるシステムが一部飲食店を中心に市場に出回っているという情報がメーカーの独自調査によって確認されているという。各自治体においては採用するシステムが知財財産権の保護された企業、メーカーによるものであるかどうかを今一度、機器選定の際に留意し対処を行ってほしい。
マイナンバーカード窓口対応数最大化と効率化の鍵は予約と順番待ちの併用連携
郡山市マイナンバーカードセンターでは事前予約システムも導入していたが、当日の予約はできなかったり、予約可能人数が1時間あたり4枠程に設定されていることから、1日で予約可能な人数も限られていたという。特に予約の急なキャンセルなどがあると職員側にとっても非効率な時間が生まれてしまうという懸念があった。一方で順番待ちシステムにおいては、例えば、次の順番の方が急用で帰られたりしても、その次の方へ順番を自動的に割り振ることができるため、無駄な空き時間が発生しない。現在、利用実態としても、順番待ちシステムの受付数は事前予約システム利用数の1.5倍程あることから、順番待ちシステムを導入したことで、密な状態を回避しながらも、より多くの対応が実現できているという。
今後は機能連携やEPARK順番待ちシステムに実装されている日時指定受付機能(特許取得)の活用なども検討に入れながら、より利便性を高めるための改善を心がけていきたいという。
マイナンバーカード普及の鍵は国と自治体との役割分担明確化と受入側のタイムリーなIT投資にあり
総務省によると、2021年4月1日時点におけるマイナンバーカード普及率は全国で28.3%となっている(※)。郡山市のマイナンバーカード普及推進のキーマンとなる太田主事に、今後普及率を伸ばしていくために自治体として必要な施策についてお伺いしたところ、非常にシンプル且つ明快な答えを聞くことができた。
最も重要なことは「国と自治体が連携し明確な役割分担を行った上でそれぞれの領域での選択と集中に特化すること」にあるという。
2021年3月~4月にかけては国のQRコード付き交付申請書やマイナポイント事業といった大規模な施策効果も追い風となったことで、各自治体での交付、申請数には急激な上昇が見られた。ポイントは国がそういった普及施策を行うことによって国民のニーズが高まったタイミングを自治体側が逃さず、タイムリーに連携することで、機会損失が発生しない受け皿を整備できているかだという。
まさに、今回の郡山市による、需要期を見越した上でのマイナンバーカードセンターの開設からEPARK順番待ちシステム導入による利用者側の利便性向上と受付窓口効率化に至る一連の施策がそれに該当する。
筆者もこれまで数多くの自治体のマイナンバーカード普及推進施策に触れ、様々な取り組み事例を目の当たりにしてきた。
ある自治体では職員がショッピングモールや学校などに出向き臨時の窓口を開設し、より多くの住民の目に触れることで幅広い層に対して利用環境を用意するといった施策があった。特に行政関連情報に触れる機会の少ない若年層においては効果的であり、中長期で利用者層の裾野を広げるといった効果が見込まれる有効な施策である。一方で国が誘導するほどの施策インパクトを短期的には創出しづらく、各自治体ではリソースにも限りがある。
国が掲げる時間軸で目標を実現していくために自治体側に求められるべきことは、IT投資で効率化を図った上で、データを検証しながら需要を予測、最適なリソース配分で需要に耐え得る受け皿をタイムリーに整備する。つまり、国が取り組み投資すべき領域、自治体が取り組み投資すべき領域を自治体側が的確に見極め迅速且つタイムリーに実行に移すことに尽きると捉えることができた。郡山市はまさにそれを有言実行する先進的な自治体であると感じることができた。
※参照:総務省「マイナンバーカード交付状況(令和3年4月1日現在)」
https://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/
【順番待ち受付システム導入施設】
郡山市役所
〒963-8601
福島県郡山市朝日1丁目23-7
郡山市役所西庁舎1階正面入口脇に郡山市マイナンバーカードセンター
https://www.city.koriyama.lg.jp/