ピーク時間帯の延長効果と従業員の負担軽減を実感

~北陸のソウルフード「8番らーめん」(株式会社ハチバン)~

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創業50年を超える老舗外食チェーンが産み出した北陸のソウルフード

株式会社ハチバンは、1967年に「8番らーめん」を創業して以来、「より多くの人々に、より良い商品をより安く、より良い環境の中でお届けし続ける」を経営理念に掲げてきたフランチャイズチェーンである。 創業からのこだわりの味わいをそのままに守りながらも、常に新しいチャレンジを続けることでシステム化された効率的な経営を可能にしてきた。2021年8月現在、国内118店舗、海外146店舗の計264店舗を展開。北陸のソウルフードとして親しまれ、最近では大手コンビニチェーンとコラボしたカップ麺も発売。今やそのブランドは全国区となっている。

北陸のソウルフード「野菜らーめん」と鶏の唐揚げセット

常に独創的なアイデアとチャレンジ精神で市場を切り開く『先見の明』

同社はコロナ禍で外食チェーンにも広がりを見せているドライブスルー方式を2013年から既に開始。また業界でも一般的となったラーメンのテイクアウト販売も、2014年から全国に先駆け市場を切り拓いてきた事はあまり知られていない。

また、現在では麺屋一燈など有名ラーメン店の他、田所商店、町田商店といった全国展開するチェーン店などラーメン業界にも徐々浸透しつつある順番待ちシステムに関しても、その効果にいち早く着目し導入を開始。常に固定概念や常識にとらわれない発想でチャレンジをし続けている。

冷めにくく伸びにくいテイクアウト専用の容器や麺を独自開発するなど持ち帰った時にもお客様に店内と同じ味で召し上がって頂くための努力を重ねている。

今や焼肉店や回転寿司店の店舗運営には欠かせない順番待ちシステムであるが、ラーメン店での活用事例は実はあまり知られていない。実際現場ではどのように使われ効果を生み出せているのか、導入に至った経緯や活用方法について株式会社ハチバン様とFCとして売上上位店を経営されているアモーレながすぎ様に直接話しをお伺いすることができた(以降インタビュー形式原文掲載)。

【画像右下】株式会社ハチバン 執行役員らーめん事業部長 谷内 敏隆(やち としたか)様【画像左】株式会社ハチバン らーめん事業部FC運営 担当部長 森 皓介(もり こうすけ)様【画像右上】株式会社アモーレながすぎ 営業部統括マネージャー前田 昭仁様(まえだ あきひと)様(コロナ禍によりWEBインタビューが行われた)

ラーメン業態におけるテイクアウト販売と順番待ちシステム導入の経緯

―コロナ禍以前から、ラーメン業態ではいち早くテイクアウト事業に取り組み、順番待ちシステムを導入するなど、新しい取り組みを率先して進めてこられたのには、何かきっかけなど理由があるのでしょうか?

 谷内氏:もともと餃子や唐揚げなどのお持ち帰りはやっていたのですが、正直「ラーメンを持ち帰るのは非常識」という考えが当時以前はありました。ですが、2014年位から高齢化社会を迎えるにあたって、お店に来られない人が今後増えるのではないか、という風に考えるようになり、将来を見越してラーメンテイクアウト販売の準備に取り掛かりました。
 ラーメンの持ち帰りというと汁が溢れたり、麺が伸び切ったりとネガティブな印象ももたれますが、今ではだいぶお客様にも浸透し、更にコロナ禍になってからはテイクアウトされる方が一段と増えました。テイクアウト専用容器や専用麺の開発などテイクアウト対応を早くから取り組んでいたため、予期せぬコロナ禍でも時代の流れに即座に対応できました。今では2013年から開始しているドライブスルー方式の導入店を増やすなどお客様の選択肢を増やす仕組みを順次強化しています。

 森氏:実は順番待ちシステムの導入については、フランチャイズ加盟店様からの提案がきっかけでした。社内には当初「ラーメン屋で順番を待つための発券機ってどうなの?」という懐疑的な意見もありましたが、元来のチャレンジ精神と人件費削減、人材の確保、といった観点から本部としても興味があったこともあり、加盟店様から導入を開始しました。

8番らーめん武生店ではいち早く順番待ちシステムを導入。今では常連のお客様にも浸透している

―実店舗では順番待ちシステムがテイクアウト販売に与えた効果などはありましたでしょうか。また、店舗ではどのようにラーメンテイクアウト販売を消費者に浸透させ売上をあげてこられたのでしょうか。

前田氏:「8番らーめん武生店」では、順番待ちシステムの導入後に、テイクアウトシステムを導入しました。既に順番待ちシステムの利用時にマイショップ会員となって頂いていた近隣のお客様にテイクアウトの販促活動が一気に行えたことでテイクアウトサービスをいち早く浸透させることができたと思います。 また、高齢者が多い地域ということもあり、機械化という部分で最初は抵抗がありましたが、順番待ちシステムではDMやクーポンを配信できるなどリピーター向けの販促も容易に実施できることから高齢者が多い地域ということもあり、テイクアウトのリピート率はかなり高いと思います。

ユーザー側(モバイル)端末の順番待ち受付画面内に「テイクアウト予約」ボタンを併設することで待ち状況や顧客側の状況に応じた選択肢を提供することができ、機会損失を防ぐことにも繋がっている。

最初は、ラーメンのテイクアウト販売を認知してもらうための工夫が必要でした。入り口に持ち帰り用の容器を設置したり、テイクアウト専用のリーフレットを用意したり、テイクアウト実施の視覚的な認知活動に取り組みました。お客様は最初不安と好奇心から注文されるようでしたが、お店で長時間待っていられない高齢者や、店内で食べづらいと考える女性の一人客などに需要があります。

ラーメン業界でもいち早く順番待ちシステムを導入し、今では現場の従業員が機能や使い方までを細かく熟知。活用することで効率的なオペレーションに活かせているという。

実際に現場が感じた順番待ちシステム導入メリットとは?

―順番待ちシステムについてお聞きします。順番待ちシステムを実際に導入してみて感じたメリットはなんですか?従業員の業務にはどのような効果をおよぼしましたか?

 森氏:順番待ちシステム導入の狙いとして、ランチやディナーのピーク時に受付業務につきっきりになってしまうスタッフ1名の削減がありました。実際に1名削減できたかというと、まだそのレベルには至っていないですが明らかに別の利点がありました。

 受付業務は、ある程度の能力と経験がないと務まらないポジションなのですが、そこに求められるスタッフの能力・担当するスタッフのストレスが軽減され必要なスキルが平準化されたことで店内従業員の最適配置が実現しました。ストレスの軽減は、お客様にもいえることで、いつ名前が呼ばれるか分からないと気を張って待たなくてはいけない状況が解消され顧客満足の改善につながりました。
 当初の導入目的とは少し異なりますが、スタッフのオペレーション効率化とストレス軽減、お客様の安心の恩恵が非常に高いです。

 前田氏:EPARKの導入前、受付でウェイティングボードを使用していた時は、受付の業務は高度な技術が必要でしたし、クレームトラブル発生リスクも内包していました。順番待ちシステムを導入することで、お客様の方も煩わしさが軽減されたのと、「大体何分待ちますか」という質問ナンバー1の回答が自動で表示されるので、お客様も安心、従業員も都度対応しなくてよい環境となりました。

 電話呼出機能によって受付でコールボタン設定すればお客様は車や別の場所で待つこともでき、密になる場所で待つ必要がなく感染症対策にも効果的です。また従業員は、待ち状況を端末で確認し、来店人数や、希望席などの情報をリアルタイム事前でに把握取得することが可能です。そのおかげで、配膳準備や席の要望に迅速な対応ができ、作業効率が抜群に高まりました。従業員・お客様共に時間の使い方が効率良くなったように思います。
 人数が多い来店時や繁忙期などはWEBでの「日時付指定優先予約受付機能」が特に役立っています。

店内はカウンター席やボックス席などに分かれているが、順番待ちシステムを使うことで事前にお客様が希望する席の種別や人数、属性情報も店側で把握でき効率的な配席や配膳に役立っている。

ピーク時間帯の延長効果を実感

―順番待ちシステムを導入したことにより、キャンセル率減少や回転率向上など、売り上げ貢献増加に結び付いていますか?

 前田氏:コロナ禍で営業時間の制限がある中で、店舗の売り上げを維持向上させていくには、客単価を上げるか回転率をあげるか従業員の生産性をあげるしかありません。そんな中、お客様の状況がリアルタイムに可視化され、一覧で把握できるので、オペレーションの最適化につながりました。

 お客様が食事をされる時間は変わらないため、回転率の向上というよりかは、ピーク時間帯の延長効果の方が実感としてあります。今までは、ピークが短時間に集中してしまっていましたが、お客様の方でピークを多少ずらした時間で優先受付をするなど調整をかけたり、待ち時間が明確になったことにより、待つという行為をしてもらえるようになりました。更に待ち時間が常に可視化できることでお客様の次の予定や状況に合わせ同じ受付画面内でスムーズにテイクアウトに切り替えなどもできることから、そのまま無断キャンセルされるお客様の数は格段に減り、機会損失防止効果を強く感じています

順番待ちシステムの導入により短時間に一極集中していたピーク時間帯が延長され機会損失も減少。無断キャンセルも極端に減ったという。

 また、順番がきた際に名前を呼んだ、呼ばない、などの受付業務におけるクレームやストレスがなくなりました。番号札を持っている意識からか、キャンセルをするにしても、お客様側から「キャンセルでお願いします」と、アプローチしていただけることが増え、受付業務で生じる混乱もなくなり、業務がよりスムーズに効率よく回せています。

 ―今後、順番待ちシステムをどのように活用していこうと考えていますか?

 谷内氏:具体的な活用にはまだ着手していませんが、どういった層がどのような企画に興味を持って来店してくれるのかなどのデータ取得ができるため、そこからリピート率を上げるための企画や商品開発につなげられると考えています。それぞれの地域にあった企画をより効果的にアプローチすることに活用していきたいです。

最後に

ラーメンのテイクアウト販売、ラーメン業態で順番待ちシステムの導入、どちらも意外に感じるかもしれない。しかし、コロナ禍の現在、飲食店のテイクアウト対応はもはや当たり前となり、感染症対策の一環として、飲食店での混雑緩和対策は事業継続のための必須事項として政府や自治体からも対応を求められている。

限られた条件下で安定的に利益を生み出し、持続可能な事業活動を継続していくためには、その時々の環境に柔軟に対応する適応力は欠かせない。

今回事例として紹介したハチバン様のように常識にとらわれず、これからの時代の流れを想像し、新しい発想で果敢にチャレンジしていく取り組みが、結果として課題解決に繋がるヒントを得られる環境、土壌を形成していると言えるのではないだろうか。

北陸出身の筆者も帰省時には必ずといって良いほど店舗に足を運ぶ。長年に渡り従業員の笑顔ともてなし、ホスピタリティの心が常にリピーターを鷲掴みにしている。

取材協力
株式会社ハチバン
https://www.hachiban.co.jp/
石川県金沢市新神田一丁目12番18号
株式会社アモーレながすぎ
福井県鯖江市小黒町1丁目15-23
https://www.nagasugi.co.jp/

電話イメージ

8番らーめん武生店